KRIYA YOGA
クリヤ 1 VIPAREETA KARANI MUDRA
ヴィパリータ・カラニ・ムードラ(逆転のサイキックなムードラ)
サンスクリット語の vipareeta は「逆転した」、karani は「成されること(行 為)」、mudra は「サイキック(精神的)な態度」を意味し、したがってこのクリ ヤは「inverted psychic attitude(逆転のサイキック(精神的)な態度」と英訳さ れます。 聖典ではこのやり方を別名「ヴィパリータ・カリ・ムードラ」と呼ぶこと もあります。
聖典からの引用
Vipareeta karani mudra は、様々な伝統的なタントラ・ヨガのテキストで述べら れている数少ないクリヤのうちの一つです。より詳しく書かれた解説書『ハタ・ヨ ガ・プラディピカ』には、次のように書かれています。
「月の分泌物(ビンドゥ)、不死の甘露(アムリット)は、通常、太陽の火(マニ プーラチャクラ)によって消費される。 それは下へ下へと流れ、結果的に体の老化 を招く。 このプロセスを逆転させることができる素晴らしいテクニックであり、そ れはグルから学ぶべきもので、たとえ千の経典を読んだとしても決して理解できる ものではない。 ヴィパリータ・カラニ・ムドラと呼ばれる修行法は、ビンドゥと太 陽(マニプラ)の位置を逆にする(つまり、体を逆転)させるのである。太陽は上 方に、月は下方に保持される。」 (v. 77-79)
ビンドゥとは、意識の顕れであり、あらゆる創造物の中にある意識が集まった点で す。これはまた人間にも当てはまり、ダイレクトな経路、つまり人間の生命線なの です。 人間がエネルギーと至福を両方とも維持できるのは、このビンドゥによるも のです。ほとんどの人は、このエネルギーを、外の世界での不調和な生活や、マニ プラチャクラによって現れる利己的で世俗的な追求に向けてしまっています。この ことは精神的な死へと至らしめます。人は自分の源との繋がりを見失い、盲目的に 生きているのです。 ヴィパリータ・カラニ・ ムードラとまさにすべてのヨガの実 践は、この作用を逆転させ、人間の意識が再びビンドゥを通して生命の源に導かれ るようにします。 つまり、意識が高まっていくのです。これは人の存在そのものを
活性化させることに繋がります。 それは至福へと繋がっていきます。 知恵へと繋 がっていきます。これを「ニヴリッティ・マルガ(源流への回帰)」といい、太陽 と月の位置が逆になります。月が太陽に向かって甘露(アムリッタ)を下降させる 通常の流れは、「プラヴリッティ・マルガ(世俗的な活動の道)」を表しています。 こちらはほとんどの人の人生を象徴しています。 スピリチュアルな生活で は、この作用を逆転させ、プラヴリッティの道をニヴリッティに変えなければなり ません。ヴィパリータ・カラニ・ ムードラはこの作用を象徴するものです。
ヴィパリータ・カラニ・ ムードラは象徴的なものというだけではありません。それ はエネルギーを粗大なものからより微細なものへと変換させる方法なのです。この ようなことから、クリヤ・ヨガの一連の流れの中に含まれているのです。
理由
ヴィパリータ・カラニ・ ムードラは、クリヤ・ヨガの一連のクリヤの中で最初に出 てくるものですが、それには様々な理由があります。 最も明白な理由のひとつとし て、鼻孔に流れるイダとピンガラの呼吸のバランスを肉体的に誘導することです。 このバランスはスピリチュアルな生活には欠かせないもので、肉体からより繊細な マインドのレベルまで、あらゆるレベルで起こるべきです。
前回のレッスンでは、イダとピンガラの呼吸の流れのバランスをとるための肉体的 な方法について説明しました。パダディラアサナというテクニックでは、脇の下を 圧迫することで必要なイダとピンガラのバランスを素早く効果的に得られることを 説明しました。ヴィパリータ・カラニ・ ムードラは、逆さまになった体の重さを支
えるために腕に強い圧力がかかるので、完成形のポーズは同じ結果になります。 この 2 つの鼻孔を通る呼吸のバランスは、瞑想の実践に欠かせないもので、内向的 で内側の世界に向かう(ida)と、反対に外の世界に向かう(pingala)という両極 端の伱間に注意を向けるのを助けます。ヴィパリータ・カラニ・ ムードラを実践し たら、呼吸の流れが確かにどんどんとバランスがよくなっていくのが自分でもわか ると思います。このバランスが取れれば、それに続くクリヤはよりパワフルになり ます。
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『ハタ・ヨガ・プラディピカ』はこう続けています。
「ヴィパリータ・カラニ・ムードラの定期的な練習は、消化の火を高めるので、サ ダカ(修行者)は余分な食べ物を用意しなければならない。もし食事が不適切であ れば、増加した消化の火は体を小さくしてしまうだろう。」(v. 80, 81)
これは、すべてのクリヤ・ヨガの実践に当てはまる警告です。食事には気をつけな ければなりません。上記の引用文では、「代謝率が上がるかもしれないので、体重
が減らないように食事の量を増やす必要がある」という注意がなされています。読 者は識別力を働かせ、その時々の必要性に応じて食事の量を調節する必要がありま す。
「最初のうちは、体を逆転させる時間は短くてよい。 その時間は毎日少しずつ長く していけばよい。半年もすれば、シワも白髪も消えるだろう」(82 節)
この助言は、30 分や 1 時間など、長時間の練習に適しています。
クリヤ・ヨガには決められた時間があり、それを超えてはいけません。聖典にある ヴィパリータ・カラニ・ ムードラは、クリヤ・ヨガの一部として特に意図されたも のではありません。ヴィパリータ・カラニ・ムードラを最初に練習するもう一つの 理由は、覚醒度を高めることです。 つまり、体を逆転させることで、脳に必要な血 液をより多く送り込み、覚醒度を高めるのです。そうすると、そうすれば、その後
のクリヤをより正確に、より意識して、眠らずに行うことができるようになりま す。ヴィパリータ・カラニ・ ムードラはシルシュアサナ(頭立ちのポーズ)と同様 に脳に作用しますが、その効果はそれほど大きくはありません。
ボディポジション(体位)
体は添付のイラストのように、体を逆転させていきます。
床にブランケット(タオル)を敷きます。
仰向けに寝て、両脚をまっすぐ伸ばした状態で揃えます。
両腕は体の横にまっすぐに置き、手のひらを上に向けます。
体全体をリラックスさせます。
深く息を吸いながら、両脚を上げまっすぐ揃えます。
脚を頭の上に持っていきます。それから両腕を床に押し付けながら、お尻を地面か ら離し、脚をさらに頭の上へと持ち上げます。
腕を曲げ、両手を腰に当てます。
胴体は腕で支えるようにします。
脚は床と垂直になるように上げます。
目を閉じて、体全体をできるだけリラックスさせます。
ヴィパリータ・カラニ・ムードラの練習のためのポーズです。
注意:サルバンガアサナとは異なり、このポーズでは顎を胸に押し付けないように します。
手の位置
初めはクリヤの練習のあいだ中、完成形のポーズを維持することが難しいと感じる かもしれません。 おそらく手が痛くなり始めるでしょう。慣れればこのような問題 は起こりませんが、それまでは必要なときに自分で調整し、手を動かしてください。逆転のポーズで体を支えるには、両手の親指と人差し指の間にお尻をはさんで 支えるのが一般的です。しばらくすると、また手が痛くなってきます。もっと良い 支え方は、手のひらに腰の上部を乗せることです。つまり、手はお尻のためのカッ プにし、手のひらの付け根にお尻を乗せるのです。その様子は、添付のイラストに わかりやすく示されています。この手の位置は、クリヤのあいだずっと完成形のポ ーズをとっていても、過度の痛みや不快感を感じることがないようにするためのも のです。
補助的なテクニック
ヴィパリータ・カラニ・ ムードラを練習するためには、ウジャイ・プラナヤマに完 全に精通している必要があります。また、マニプラ、ヴィシュッディ、アジュナの 3つのトリガーポイント(刺激点・チャクラ)に対する感受性を高めておく必要が あり、できればそれらに関連するテクニックを習得しておくとよいでしょう。 練習では、後頭部のビンドゥのトリガーポイント(刺激点・チャクラ)の位置を確 認し、サハスラーラのトリガーポイント(刺激点・チャクラ)に注意を向ける必要 があります。 この位置は、象徴的に頭頂部の中心にあるため、非常に見つけやすい です。
テクニック
逆転のポーズをとります。
脚を完全に床と垂直にします。
目を閉じます。
体をできるだけリラックスさせます。
ウジャイ・プラナヤマをします。
背骨にあるマニプラチャクラのトリガーポイント(刺激点)に意識を集中させま す、ここが第 1 ラウンドのスタート地点となります。
息を吸いながら、マニプラチャクラからヴィシュッディチャクラに向かうプラナの 流れを感じようとします。
このプラナが、アムリット(甘露)の温かく滑らかな流れのように背骨の中を通っ ていくのをイメージしてください。
甘露がヴィシュッディ・チャクラに集まるようにします。数秒間呼吸を止め、ヴィ シュッディで甘露が冷たくなるのを感じます。
次に息を吐きながら、プラナがヴィシュッディからアギャ(アジュナ)、ビンドゥ を順番に通り、最終的にサハスラーラに到達するのを感じます。
吐き出す息の力によって、これらのトリガーポイント(刺激点)からプラナが送り 込まれるのを感じるはずです。
プラナと意識がサハスラーラに到達したら、1 ラウンドの終了です。すぐに意識を マニプラに戻し、2 周目を繰り返す。
合計 21 ラウンドを完全に行えるようにします。
それができるようになったら、2 番目のクリヤに進みます。
呼吸とサイキックな通り道
練習の間中、ウジャイ・プラナヤマを実践する必要があります。 吸う息は、マニプ ラから背骨の中心を経由してヴィシュッディ・チャクラのトリガーポイント(刺激 点)につながるサイキック(精神的)な通り道で行います。 ヴィシュッディで数秒 間呼吸を止めます。息を吐くときは、ヴィシュッディから背骨を通ってアギャ(ア ジュナ)へ、そしてそのままビンドゥへ戻り、頭頂のサハスラーラへ抜けるサイキ ックな通り道で行います。呼吸は、プラナやアムリットがサイキックな通り道を通
る流れと同調させる必要があります。呼吸はできるだけゆっくり心地よく行いま す。
意識
意識は、プラナが通過するときのサイキックな通り道と、トリガーポイント(刺激 点)に向けます。各ラウンドは、あなたの意識がサハスラーラに到達するたびに、 心の中で数えます
長さ
21 ラウンド練習する必要があります。呼吸の速さによって所要時間は異なります。 平均的な練習時間は約 10 分です。最初のうちは、21 回全部を練習する必要はあり ません。 練習の初日は、5 ラウンドだけ行います。その後、毎日 1 ラウンドずつ増 やしていきます。
過度の知識化
練習の中で、頭でっかちになりすぎないようにしてください。 ただひたすら修行す ることで、すべての答えはそのうちに出てくるでしょう。